旅先の朝は、その宿の本質がいちばんよく見える時間。
石川県・山中温泉の「花紫」で迎えた朝も、まさにそうでした。
朝食会場は、昨夜と同じ食事処「にほん」。けれど、朝の光に包まれたその空間は、夜とはまるで違う表情を見せてくれます。
窓の外に広がる木々の緑が、ゆっくりと目を覚ますように揺れていて――
その景色を眺めながらの朝食は、静かなご褒美の時間でした。
🌿 スイート宿泊者へのさりげない心配り
案内されたのは、昨日と同じテーブル。けれど朝は、二人並んで窓側に向かうように椅子が並べられていました。
なるほど、この配置なら自然と景色を共有できる。
きっとスイート宿泊者へのさりげない配慮なのだと思います。
窓の外に広がる緑が、やわらかな光に照らされてとてもきれい。
朝の空気と一緒に深呼吸したくなるような、清々しいひとときでした。


🍱 出来立てを少しずつ、五感で楽しむ朝食
テーブルに並ぶ料理は、どれも出来立て。
お味噌汁やご飯からは湯気が立ちのぼり、香りがふんわりと広がります。
“温かいものは温かいうちに”という想いが伝わる、丁寧な提供の仕方です。
特に印象的だったのは、蒸し野菜。
係の方が鍋に少し水をさすと、目の前で蒸気が立ちのぼる仕掛けになっていて、その瞬間に空気がやさしく変わるんです。
にんじん、ブロッコリー、さつまいも…どれも素材の甘みが引き出されていて、調味料に頼らない自然の味が心地よく広がります。



🐟 炭火で焼く一夜干しと畳鰯 ― 香りに癒やされるひととき
魚、畳鰯、ホタルイカは、小さな炭火の網で自分で焼くスタイル。
じゅうっと脂が落ちる音、ふわりと広がる香ばしさ――
朝から少し贅沢な気分になります。
焼き上がった一夜干しは、表面がパリッと、中はふっくら。
レモンを絞るとほんのり酸味が加わって、口の中がすっきりとします。
畳鰯も香ばしく、香りが立つたびにご飯が進んでしまうほど。


🍳 ふんわり出汁巻き卵と、やさしい味の小鉢たち
出来立ての出汁巻き卵は、ふんわりとやわらかく、口の中でじんわりと出汁の旨みが広がります。
甘すぎず、塩気もほどよく、朝にぴったりの優しい味わい。
小鉢で並ぶおひたしや佃煮も、一品一品が丁寧に作られていて、食べるたびに“手仕事の宿”だと感じさせてくれます。
どのお皿も主張しすぎず、全体のバランスがとても良い。
派手さはないけれど、ひとつひとつに美しい所作が感じられました。

☕ 朝の余韻を静かに味わう
全てを食べ終えるころには、外の木々が柔らかな光に包まれていました。温泉宿で迎える朝は、どこか非日常的で、心身がすっと整っていくよう。
「花紫」の朝食は、ただの食事ではなく、一日の始まりを優しく彩る“体験”そのものでした。


